マイホームを手に入れるためには、長期間にわたって貯金し、多額の住宅ローンを組む必要があります。
しかし、最近では実際に「タダで土地や建物を手に入れることができる物件」も存在するのです。
ただし、このような物件を見ると、詐欺ではないかと心配になったり、「きっとボロボロの空き家になっていて住むことはできないだろう」と思って、最初から検討の対象から外してしまう人も多いのではないでしょうか。
一方で、実際に0円物件を手に入れてリフォームし、理想的な生活を送っている人も存在します。
今回は、0円物件について、詳しく説明します。
ぜひ、物件購入の参考にしてみてください。
0円物件(無償譲渡物件)とは
「0円物件」とは、土地と建物の価格が無料である物件のことを指します。
通常、土地や建物は市場価格や取引事例、築年数などに基づいて価格が決まりますが、所有者の事情や経済環境、社会環境の変化によって、無料で譲渡したいという物件が存在するのです。
これらの物件は主に郊外や地方にあり、地方自治体の専門部署が情報提供しています。
地方で0円物件が活用される背景は、以下のとおりです。
地方で0円物件(無償譲渡物件・不動産)が活用されている背景とは
地方では、0円物件(無償譲渡物件)が活用されるケースがあります。
以下にその詳細を解説します。
人口減少や高齢化が背景 日本の人口は、2008年をピークに減少しています※1。
一方で、住宅の総戸数は増え続けています※2。
その結果、不動産の供給が過剰になり、空き家が増えてきたのです。
人口が減少し続け、住宅が増え続けるならば、当然空き家の数も増えていくことになります。
また、高齢化社会も空き家の増加に影響しています。
昔から地元に住んでいた人が子供が独立し、地方を離れて同居することがなければ、地方の家は空き家になってしまうのです。
高齢者の移転が地方の空き家を増やす原因となる
高齢者の方々が老人ホームや介護施設に移転することで、地方の空き家が増える原因になるのです。
というのも、地方では過疎化が進んでいます。
人口減少が都市部よりも地方でより顕著に現れているのは、都市部に雇用が集中しているためです。
その結果、地方から都市部へ人口が流出しています。
実際、東京23区や一部の地方の主要都市を除いて、過疎化が進行している傾向があります。
空き家になった建物は、長期間住人がいないまま放置されると、傷みが早まり、老朽化が進行します。
そのまま放置しておくと、火災や盗難、破壊行為のリスクが高まり、犯罪の温床にもなりかねません。
そのため、政府は老朽化した空き家をできるだけ放置せず、一定の条件を満たす危険な空き家には固定資産税の優遇措置を適用しないよう、法改正を行いました。
空き家が増える背景と税金対策
空き家が増える背景としては、建物の解体が進まない点が挙げられます。
不動産を所有しているだけでも、固定資産税や都市計画税が課税されます。
特に、特定の空き家になると、固定資産税が最大6倍にもなります。
さらに、空き家を相続すると、相続税も発生する可能性があります。
所有者としては、建物を所有しているだけで、建物の維持費がかかったり、将来的に相続税がかかる可能性があるため、無償であっても不動産を手放す方が経済的に有利だという事情があります。
実際に、住まずに税金だけを払い続けるよりも、空き家を無償で譲渡することでメリットがあるケースもあります。
自治体もこのような状況を踏まえ、無償譲渡物件を集めてWebサイトやメディアで広く発信するようになりました。
建物解体の未進行による空き家の増加
では、なぜ空き家が増えるのでしょうか。
その主要な原因は、建物の解体が進まないことです。
家がなかにあり、住んでいて大切な思い出がたくさんあるため、家を解体することは非常に心苦しく感じる人も多いです。
また、解体費用を工面できないという経済的な問題もあるかもしれません。
さらに、家を解体すると、更地になるために固定資産税が上がるという金銭的な影響もあります。
さらに、土地の状況によっては、再建築ができない場合もあり、そのような場合は、取り壊しを行うことに対して非常に慎重になる必要があります。
0円物件(無償譲渡物件)のメリット
不動産を無料で手に入れることができる
土地・建物が無料で手に入る 0円物件の大きな利点は、不動産を無料で手に入れることができるということです。
通常、不動産を購入するには多額の予算が必要となりますが、0円物件では取得費用がかからないため、予算を他の用途に回すことができます。
例えば、リフォームや車の購入などに使うことができます。
また、不動産購入費用がかからないため、自分の好みに合わせて住まいをリノベーションする際にも費用を大幅に節約できます。
特別な優遇制度や補助金を利用できる場合もある
一部の自治体では、0円物件の取引を活性化させるために、特別な優遇制度や補助金を用意しています。
例えば、0円物件のリフォームや建て替えのために建物を取り壊す場合には、補助金が支給される場合があります。
ただし、補助金の利用には一定の要件を満たす必要があります。
具体的な補助金の金額や要件は、自治体によって異なるため、利用する前に確認することが重要です。
これらの補助金を利用することで、低コストで0円物件を活かすことができます。
民泊などの経営に利用できる可能性もある
0円物件(無償譲渡物件)をビジネスとして利用することもできます。
例えば、民泊や賃貸経営などです。
ただし、民泊を営業する場合は、必要な届出や許可を取得する必要があります。
特に民泊は新たな法律で規制されているため、注意が必要です。
しかし、0円で物件を入手できることで、ビジネスのスタートアップ費用を大幅に節約することができるメリットがあります。
※上記は一般的な解説です。
具体的な制度や条件については、各自治体や関連する法律を確認する必要があります。
0円物件(無償譲渡物件)のデメリット
0円物件は、無償であることから様々なデメリットが生じることがあります。
0円物件を検討する際には、現在のデメリットを慎重に検討し、それを許容できるかどうか考える必要があります。
譲渡手続きや書類の作成を自分で手配する必要がある
0円物件の契約は、「無償譲渡契約」または「贈与契約」という形で締結されます。
これらの文書の作成や契約手続き、司法書士への登記申請など、さまざまな手続きを自分で手配しなければなりません。
通常、これらの手続きは不動産業者が仲介業務の一環として行いますが、0円物件の場合は不動産業者が手数料を受け取りづらいため、関与しないことが多いです。
自治体によっては契約書の書式に関するアドバイスを受けることもできますが、本格的な贈与契約書を作成する場合には、弁護士、司法書士、または行政書士の援助が必要です。
なお、契約書作成費用の目安は、約5万〜10万円です。
住宅の契約不適合責任については免責の場合が多い
0円物件では、無償であるため、従来の所有者は住宅の不具合について責任を負わないという条項が一般的です。
そのため、もしも住宅に重大な不具合が発見された場合でも、不具合の修理費用を物権の譲渡者に請求したり、不具合が深刻である理由で契約を解除することができない場合があります。
特に、柱や床、基礎部分の腐食など、外部から判別できないシロアリや害虫による被害は、住まいの安全性に大きな影響を与える可能性があります。
0円物件を取得する場合は、こうしたリスクに対処する方法を考えておく必要があります。
リフォーム費用がかなりかかる場合がある
0円物件は築年数が古い古民家であるケースが多く、居住するためにはリフォームが必要となる場合があります。
古い家では、断熱材が不足していたり、水回りの設備が老朽化しているなどの問題があります。
そのため、新築と同じようにリフォーム費用がかかることもあります。
例えば、断熱材の追加や配管の交換、屋根や柱の修理などです。
これらの費用は大きくなる場合もあります。
建物維持費が高い場合がある
古民家や老朽化した建物を維持するためには、頻繁な費用がかかることがあります。
建具や建材の質が良くないため、冷房費や暖房費が増えることもあります。
また、定期的な修繕やメンテナンスも必要となります。
これらの費用は意外と大きくなる場合もあります。
税金がかかる
0円物件と言っても、実際にはいくつかの費用がかかってきます。
リフォーム費用や引っ越し費用、新生活のための費用以外にも、税金もかかります。
特に注意が必要なのが贈与税です。
不動産を贈与された場合、贈与税の申告が必要となります。
贈与金額が一定額を超えると、贈与税が発生します。
また、登録免許税や不動産取得税も支払う必要があります。
これらの税金は、物件の時価を基に算定されます。
不動産の取得に伴う手続きや税金について
かなり古い建物を取得する場合、登記がされていないことがあるため、事前に確認が必要です。
具体的には、土地家屋調査士に表題登記申請を依頼し、その後に司法書士に所有権の保存登記の申請依頼を行います。
不動産取得税も取得原因に関わらず課税されます。
土地や建物を取得してから数か月後に、不動産取得税の納付書が送られてくるため、必ず受け取るようにしてください。
固定資産税や都市計画税
固定資産税は、1月1日時点で土地や建物を所有している方に課税される税金です。
そのため、年の途中で無償で土地や建物を譲り受けた場合には、翌年の4月から6月ごろに固定資産税の課税決定通知書と納付書が送られてきます。
都市計画税も同じタイミングで課税決定通知書と納付書が送られます。
ただし、郊外の土地や建物であれば、都市計画区域外の場合には課税されません。
0円物件(無償譲渡物件)を探す方法
まずはインターネットで0円物件を扱っている自治体を検索し、役場の担当課に連絡してみましょう。
自治体によっては説明会を開催していることもありますので、情報を定期的にチェックすることをおすすめします。
また、自治体が運営する「空き家バンク」のホームページ上で物件が紹介されている場合もあります。
興味のある物件については、担当窓口に問い合わせて現地見学を申し込む手続きになります。
自治体によっては、低額な賃料で一定期間賃貸した後に無償譲渡するという条件を付けている場合もあります。
また、中にはセカンドハウスとしてではなく住民票を移転する必要がある条件を付けている自治体もあります。
0円物件(無償譲渡物件)を投資として活用する方法
0円物件(無償譲渡物件)は、他の条件が付いていることがありますが、探してみると掘り出し物件が見つかることもあります。
これらの物件を自分の好みに合わせてリフォームして新しい生活を楽しむ人もいます。
また、一部の人々はこれらの物件を自宅ではなく、職場や店舗として利用しています。
ここでは0円物件(無償譲渡物件)を活用するさまざまな方法について詳しく紹介します。
1. 民泊などの宿泊施設として活用する 最近では、広い古民家をリノベーションして旅館や民泊用の宿泊施設として利用している例があります。
ただし、現在の建築基準法に合わせるためには、耐震性や断熱性能に改善を行う必要があり、多くのリノベーション費用がかかる場合もあります。
しかし、コロナ禍前には予約が取りづらいほど人気のある古民家旅館も存在しました。
また、運営を代行する会社も存在しています。
2. コミュニティハウスやシェアオフィスで活用する 近年、パソコンさえあれば場所や時間を選ばずに仕事をする人が増えてきました。
そのため、古民家を利用したシェアオフィスやコワーキングスペース、コミュニティハウスを運営する人も増えています。
これらの施設では、利用者から一定の利用料を受け取り、シェアオフィス用のテーブルやロッカー、Wi-Fi環境、電源などが完備されており、おしゃれな雰囲気を持つシェアオフィスに改装されている場所もあります。
3. 福祉施設を経営する 0円物件を利用して福祉施設を経営する方法もあります。
高齢化が進む地域では、福祉施設への需要が増えています。
ただし、福祉施設としての要件に合わせたリフォームが必要です。
利用者のニーズに合わせた設備を整える必要がありますので、介護士や介助士の協力を得ながら計画を進めることが重要です。
4. トランクルームとして活用する 0円物件をトランクルームとして貸し出すビジネスもあります。
トランクルームの始め方と成功のためのポイント
トランクルームを開業するには、国土交通省の許可を得る必要はありません。
このため、事業を比較的簡単に開始することができます。
しかし、盗難などのトラブルを防止するためには、セキュリティを強化する必要があります。
また、他のトランクルーム業者との差別化も重要です。
これらの対策を行うことで、利用者を集めることができます。
まとめ
もしも、田舎での暮らしを夢見ているのであれば、0円物件を検討することをおすすめします。
ただし、無償譲渡を受けるためには一定期間住まなければならない場合もあるため、注意が必要です。
しかし、場所さえ問題なければ、驚くほど質の高い物件を無料で入手することができるかもしれません。
このコラムで紹介した注意点や活用方法を念頭に置いて、空き家バンクなどの0円物件を集めたサイトを一度覗いてみると良いでしょう。