多くの人々は、海外不動産への投資を考える際に、税制改正の内容や節税効果について気になることがあるかもしれません。
過去には、日本の法定耐用年数に基づいて海外不動産を減価償却することができ、高い節税効果をもたらすことができました。
しかし、2020年度の税制改正により、これまでのルールは適用できなくなりました。
ですので、税制改正の内容や変化を理解せずに海外不動産を購入すると、後悔する可能性があるので注意が必要です。
この記事では、2020年度の税制改正の内容や対応策について解説します。
また、海外不動産の節税効果に関する基礎知識や、売却時の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
海外不動産を相続税対策
海外への投資や移住が増加する中で、資産運用の一環として外国資産への投資や海外不動産の取得が注目されています。
ここでは、海外不動産を所有することが相続税の節税対策になるかどうかについて考えてみましょう。
海外資産について相続税が課されるかどうか
海外資産について相続税が課されるかどうかは、被相続人がどこに住んでいるかと相続人の住所・居住年数が影響します。
被相続人が日本に住所を有する場合
被相続人が日本に住所を有しており、海外に資産を所有している場合、被相続人が亡くなると相続が開始され、その際に海外資産は相続財産として認められます。
被相続人の居住地に関係なく、常に日本で相続税が課されることになります。
被相続人が海外に住所を有する場合
こちらでは、更に場合分けをして考える必要があります。
①相続人が日本国内に住所を有する場合、または海外に住んでいるが期間が5年以下の場合 この場合、常に日本で相続税が課されます。
相続財産に含まれる海外不動産も税金対象となります。
②相続人が海外に住所を有し、かつ居住期間が5年以上である場合 被相続人が海外に居住している期間が5年以下の場合と同様に、相続税は日本で課されます。
相続人の住所や居住年数に関わらず、海外不動産は相続財産として評価されます。
以上、被相続人の立場に立ち、日本国籍を有する人が、相続人の相続税負担を軽減するために海外不動産を所有することの有効性について考えました。
相続税対策の一環として海外不動産を検討する際には、自身の居住状況や相続人の住所・居住年数などを考慮して、税務の専門家と相談することをおすすめします。
海外資産の相続税について
被相続人も5年以上海外に居住している場合、海外資産には日本の相続税が課税されません。
ただし、これは被相続人と相続人のどちらもが5年以上海外に住んでいる場合に限ります。
それ以外の場合、海外資産にも日本の相続税が課税されることになります。
日本国内の不動産の評価方法
日本国内で不動産を保有する場合、その評価は土地と建物で異なります。
土地の評価は通常の市場価格の約80%の路線価を基準として行われます。
一方、建物の評価は市場価格ではなく、固定資産税評価額で行われます。
この結果、日本国内の不動産は一般的に市場価格よりも低い金額で評価されるため、相続財産の評価額を下げることができます。
海外不動産の評価方法
海外資産の評価方法は、法的には日本の財産と同様の方法で評価されます。
しかし、現実には海外には路線価などの制度が存在しない場合が多く、これにより海外不動産の評価は困難となります。
したがって、海外不動産の評価には他の方法を採用する必要があります。
海外不動産で節税しやすかった理由
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
日本の法定耐用年数が適用されていたため
2020年度の税制改正以前、日本の税法では海外の不動産にも日本の法定耐用年数が適用されていました。
このため、節税効果を得ることができました。
具体的には、不動産の価値を減価償却の形で分割して会計処理する際に、その不動産の法定耐用年数に応じて一定額を毎年計上することができました。
法定耐用年数が短い場合、1年間に計上できる額が増えるため、節税効果も大きくなります。
日本と海外の木造住宅の法定耐用年数と、実際の住宅寿命を比較してみましょう。
アメリカでは27.5年の法定耐用年数が設定されていますが、木造住宅の実際の寿命は104年です。
イギリスでは法定耐用年数が設けられていないため不明ですが、木造住宅の寿命は140年です。
一方、日本では法定耐用年数が22年ですが、実際の寿命は30年とされています。
このように、日本の法定耐用年数は他の先進諸国に比べて比較的短いです。
そのため、日本の会計ルールに沿って減価償却を行う方が効率的であり、節税効果を得ることができると言えます。
さらに、法定耐用年数を過ぎた中古物件であれば、日本の減価償却のルールに基づいて4年で減価償却することが可能です。
一方、欧米では建物の価値が時間と共に上昇する傾向があり、住宅寿命も長いです。
そのため、中古物件を運用する環境も整っています。
日本よりも法定耐用年数が長く、実際の住宅寿命も長いので、欧米では中古物件の運用が容易であると言えます。
損益通算できていたため
2020年度の税制改正以前は、海外の不動産の減価償却費を給与所得などと損益通算することができました。
これにより、節税効果を得ることができました。
特に、中古物件では、物件の種類によってはわずか4年という短期間で減価償却ができるため、大きな節税効果がありました。
例えば、海外で築23年の木造アパートを5,000万円で購入した場合を考えてみましょう。
法定耐用年数は22年で、これを0.2倍すると4年になります(端数は切り捨てます)。
したがって、減価償却費は5,000万円を4年で割ると1,250万円になります。
1年間の家賃収入は625万円であり、家賃収入から減価償却費を引くと、損益は625万円マイナスです。
税制改正以前の場合、赤字分の625万円を給与所得などと合算することができましたが、税制改正以後は赤字分は考慮されません。
また、土地の取得に必要な利子の部分も損益通算の対象外となっており、節税効果が薄れている状況です。
経費の中で最も大きな割合を占める減価償却費や土地の借入金利子が損益通算できないため、海外の不動産を取得する魅力が減少しました。
まとめ
海外不動産を相続した場合の相続税の取り扱いと、それに伴うリスクについてまとめました。
もちろん、晩年を海外で過ごすことや、そのために海外で不動産を取得すること自体は問題ありません。
ただし、それを日本の相続税を回避または軽減するために利用することには効果がないと考えるべきです。